小鼠、ニューヨークを侵略
1955年/翻訳:清水政二/創元推理文庫
『北アルプス山中のグランド・フェンウィック大公国――自由を旗印に平和な日々を送るこの小国が外貨を獲得する手段は、特産のワインだけ。ところが、世界に誇る大公国ワインの偽物を、アメリカのワインメーカーが発売した。対する大公女の奇策は、かの大国への宣戦布告!折もおり、アメリカでは究極兵器が完成?大国支配の国際政治を笑い飛ばす、痛快無比のユーモア冒険小説!』
すげぇ面白かった!おすすめ。
ヨーロッパの小さな国が、鎖帷子と剣と弓でアメリカに宣戦布告するという話。基本的にユーモアの塊みたいな話ですが、細かい部分は非常にまじめで地に足の着いた描写がなされています。
たとえば、アメリカ遠征軍がグランド・フェンウィックを出発するシーン。
太鼓が打ちならされ、ラッパが高らかにひびき渡り、遠征軍は中庭に出て丘をくだり、橋を渡って国境へ向かった。その後には群集がつづいて行進した。子供たちは道の両側に列をつくって『曲がった旗竿と灰色のカモの翼』を唄った。叫ぶもの、万歳の声を上げるもの、誰も彼もが雄雄しさに武者震いしていた。
国境で遠征軍は平服に着かえ、マルセイユ行きのバスに乗った。住民はそれぞれわが家へ帰って行った。
全編こんな感じ。もしくは、
「大統領閣下。われわれは現在、ある国と戦争状態に入っております。我々は単にこの国と戦争状態にあるのみではなく、この国が戦争に勝ったのだと私は考えています。」
「戦争の進行しているのを発見するために、秘密調査員を使用した世界史で最初の戦争です。」
とか。
この独特で絶妙なテンポの言い回しにぐいぐいと引き込まれます。
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