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2006/10/01

アダム・ファウアー『数学的にありえない』

2005年/翻訳:矢口誠/文藝春秋

『破滅寸前の天才数学者ケイン。彼を悩ませる謎の神経失調には大きな秘密があった。それは、世界を根底から揺るがす「能力」の萌芽だったのだ。それを狙い、政府の秘密機関≪科学技術研究所≫が動き出し、その権力を駆使してケインを追い始めた。
 なぜ彼らはケインを追うのか?彼らが追うケインの「能力」とは何なのか?そして科学者トヴァスキーが進める「研究」の目的とは?執拗な追っ手から逃れつつ、ケインはその謎に迫ってゆく。
 いくつもの物語が謎をはらんで一斉に疾走、ここに前代未聞のアイデアを仕込んだジェットコースター・サスペンスが幕を開ける。超高速で錯綜する物語はどこへ着地する?』(上巻)

『数学者ケインとCIA工作員ヴァナー。圧倒的窮地に陥った二人が共闘を開始した。一方ケインを追うフォーサイス博士も戦闘のプロを動員、火力とマンパワーを増強して捕捉作戦を過激化させる。
 これで役者はそろった。すべての布石の配置は完了した。強大な敵に追いつめられたケインの「能力」は、ついに発現する。非力な民間人にすぎない彼の唯一最大の武器が発火する――確率的にありえない連鎖反応を引き起こし、やつらの包囲網を突破するのだ。
 すべての物語はここに至って一点に集中し、炸裂する伏線、伏線、伏線。次々に明かされる意外な真実。そして、この長く壮絶な戦いの「目的」とはいったい何なのか?未曾有の超絶的サスペンス、結末へ向けて全力疾走を開始!』(下巻)

 正直に言うと、この本のことをついこの間まで理系ノンフィクション本(たとえば、「奇妙な論理(マーチン・ガードナー)」のような)だとばっかり思ってました。
 で、実際に読んでみたら一級品のエンターテイメント。適度にSF風味のついたジェットコースター・サスペンス。
 主人公をわざわざ数学者と設定してあるだけに、本編のキーになるのは数学・物理的なものですが、新しい用語が出てくるたびにわかりやすく面白く解説されているので、理系的なものが苦手な人にも安心して読んでもらえます。
 ジェットコースターとはいえ、勢いだけの話ではもちろんありません。丁寧に作られたプロット。振り返って「ああなるほど」と納得できる、わかりやすいけれど丁寧に迷彩された伏線。『赤いボウタイの男』には見事にだまされました。
 ああ、面白かった!

 よし、それでは確立の話をしよう。まずはみんなも興味のある話――ロトくじについてだ。
 たとえば、ロトくじのなかで一番高い賞金額が狙える<パワーボール>の場合、当選する確立はたった一億2000万分の一しかない。ところが、一九九七年にこのロトくじが開始されて以来五〇人以上の“確立を無視した”人たちが巨額の賞金を当てている。この地球上でもっともラッキーで、最も裕福になった人たちというわけだな。ぼくにいわせりゃほんとに腹立たしいやつらだが、ま、それはまた別の話だ。
 さて、起こりうる核率が極端に低い事例をもうひとつ挙げよう。地球に巨大な隕石が衝突して、文明が消え去ってしまう確立だ。天体物理学者の計算によると、この衝突が起こる確率は、毎年ほぼ100万分の一だという。
 われわれの祖先である類人猿は、700万年まえからこの地球を闊歩していた。ということは、現在までに人類が滅亡している確立は、ほぼ700パーセントになる。いいかえれば、ぼくらはみんな死んでいるはずなんだ――それも一回じゃなく、七回も。
 しかし、おそらく知らないものはいないと思うが、有史以後、人類は一度として絶滅していない。
 では、なぜぼくはこんな話をしているのか?なにも、人類は隕石の衝突で滅びるだろうといいたいわけじゃない。ここできみたちに理解してほしいのは、起こりうる確率が非常に低い事象には、ある性質が備わっているってことだ。それをひとことでいうと――

 なにがどうなるかなんて、わかりゃしない。

    ――ディヴィット・T・ケインによる統計学の講義より

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