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2008/02/14

アルブレヒト・デューラー『ネーデルランド旅日記』

『1520年夏、五十歳の画家は途切れた年金の支給を新皇帝カルロス五世に請願すべく、妻と侍女を伴い遠くネーデルラント(今のベルギー地方)への長旅に出る。そのとき綿密に付けた出納簿である本日記にはエラスムスやルッターも登場し、併せて残された見事な画業とも相まって稀有の旅行記になっている。』

 この本はドイツ-ルネサンスの大画家アルブレヒト・デューラーが、1520年7月から翌年1521年7月にかけてニュルンベルクからネーデルラント地方に旅した際に本人が残した記録です。
 旅行記というよりは、出納帳に日記兼備忘録を一緒に書き込んだいわば旅の雑記帳ですが、それだけに16世紀のリアルな空気を感じられてたいへん愉快。……16世紀といえばT&Tの時代だよなぁ(ゲーム脳自重)
 翻訳を担当した前川誠郎氏の解説が緻密かつ詳細で、われわれに縁遠い16世紀のネーデルラントの情景を思い浮かべる大きな助けになってくれます。でも、206ページからの地図はもうちょっと頭のほうのページに持って来てほしかったな。

(長くなるのでここで折りたたみ)

 本文はこんな感じで記録されています、ちょっと長くなりますが以下ごっそり引用。

十月四日
 ミカエルの日の後の木曜日に私はアーヘンへ向けて出発し、一グルデンと一ノーベル余分に持参した。マーストリヒトを抜けて私たち一行はギュルペンへ行き、そこから日曜日にアーヘンへ行った。そこまで車馬賃他一切を含めて三グルデン使った。

十月七日
 アーヘン[の大聖堂]で私はカロルス[大帝]がローマ(ラヴェンナ)から持って来てそこに嵌めさせた緑と赤の斑岩と花崗岩の見事な柱頭つきの均衡[法に則られて造られた]円柱を見た。これらの円柱は実際ウィトルーウィウスの書によって造られたものである。
 アーヘンで一組の雄牛の角を金貨一グルデンで買った。
 ハンス・エーブナー殿とゲオルグ・シュラウデルスバッハとの肖像を木炭で描いた。ハンス・エーブナーをもう一度描いた。
 二シュトゥーバーで柔砥石を一つ買った。
 入湯代および連れとの会飲代五シュトゥーバー。
 支払いのために一グルデンをくずした。
 [市役所の]大広間を案内してくれた市の職員に二ヴァイスペニッヒをやった。
 連れとの会飲代および入湯代五ヴァイスペニッヒ。
 ハンス・エーブナー殿と《鏡亭》に賭けて七シュトゥーバー敗ける。
 少年クリストフ・グローラントの肖像を木炭で描く、また宿の主人ペーター・フォン・エンデンをも。
 連れと三シュトゥーバー使い、飛脚に一シュトゥーバー払う。
 パウルス・トープラーとメルテン・プフィンツィヒの肖像を私の小写生帳に描く。
 [大聖堂]宝庫で皇帝ハインリッヒ[二世]の腕、聖母の肌着と帯その他を観る。
 聖母教会(大聖堂)とその周りを写生する。
 [カスパール・]シュトゥルムの肖像を描く。
 [宿の主人]ペーター・フォン・エンデンの義兄弟の肖像を木炭で描く。
 大きな牡牛の角一組に十ヴァイスペニッヒを払う。
 心付けに二ヴァイスペニッヒ。
 支払いのために一グルテンをくずす。
 三ヴァイスペニッヒを賭けで失う。さらに二シュトゥーバー敗け。
 飛脚に二ヴァイスペニッヒ。
 トマジンの娘さんに四グルデンの値打ちのある聖三位一体の絵を贈る。
 洗濯代一シュトゥーバー。
 アーヘンのケッピング夫人の姉妹の肖像を木炭で、そしてもう一度は銀筆で描く。
 入湯代三ヴァイスペニッヒ。
 野牛の角に八ヴァイスペニッヒ。
 帯に二ヴァイスペニッヒ。 緋色のスカーフに一フィリップス・グルデン。
 紙代六ペニッヒ。
 支払いのために一グルデンをくずす。
 洗濯代に二ヴァイスペニッヒを払う。

十月二十三日
 十月二十三日アーヘンにてカルル王戴冠。私はこの世に生きる何人(なにびと)もこれよりさらに壮麗なものを見たことがない盛儀の一切を目にした。そのすべては[ヘルマン・モールの書物に]記されたごとくである。
 マッテスに私は二グルデン相当の作品を贈った。
 マルガレータ皇女の侍従シュテファン(エティエンヌ・リュリエ)に作品三点を贈呈。
 杉材の念珠に十ヴァイスペニッヒ。
 厩舎の少年ハンスに一シュトゥーバー、また宿舎の子にも一シュトゥーバーやった。
 賭けで二シュトゥーバー半敗け、二シュトゥーバーを使う。
 理容師に二シュトゥーバー。
 また一グルデンをくずす。 宿に七ヴァイスペニッヒの心付けを置いた。
 そしてアーヘンからユーリッヒへ行き、そこから[またアーヘンへ戻った。]
 眼鏡二箇に四シュトゥーバー。
 王の肖像を打ち出した銀貨二シュトゥーバーを賭けで失う。
 牡牛の角二組に八ヴァイスペニッヒ。


 上の本文を見るとわかるように、十六世紀ヨーロッパということで、さまざまな貨幣単位が登場するのも大きな魅力です。
 何しろ時代は貨幣統一のはるか以前。当たり前ですが、ブーツ一足金貨15枚なんていうゲームみたいな便利な取引なんてし様がありません。色々な土地の貨幣が平行して使用されていたり、当たり前に物々交換で取引していたり、じつに面倒くさくて煩瑣な人間と人間の取引です。
 そんなにぎやかで生き生きとした空気が、この一見淡々と記されているように見える出納覚書からはあふれ出しています。素晴らしい。

 後半の解説ページに通貨の表があるのでまたもやごっそり引用してみましょう。

<通貨の名称と価値>
・換算
[ライン]グルデン=20ヴァイスペニッヒ
         =24シュトゥーバー
         =40ヘラー
         =252ペニッヒ

・通貨名(日記に登場順 一部は換算表つき)
ポンド=30ペニッヒ
ペニッヒ(銀貨)
ヴァイスペニッヒ
ヘラー=半ヴァイスペニッヒ
フランクフルト・ヘラー
フランクフルト・ペニッヒ
シュトゥーバー
オルト=4分の1グルデン
フィリップス・グルデン=25シュトゥーバー
シュレヒター(軽)・グルデン=半グルデン=12シュトゥーバー
クローネ=1グルデン9シュトゥーバー(デューラーの換算による)
アングロット=2グルデン2シュトゥーバー
ノーベル=アングロット(英国の通貨)
ホルン・グルデン
ドゥカート(イタリアまたはハンガリーの通貨)
ポルトガル・グルデン=10ドゥカート
シュレヒター(軽)・シュトゥーバー=半シュトゥーバー
ブランケ=2シュトゥーバー

……ね、見てるだけでワクワクしてくるでしょう?

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