Satoko Kiyuduki『Shoulder-a-Coffin Kuro』
ずいぶん前に予約していた、きゆづきさとこ『棺担ぎのクロ。懐中旅話』の英訳版がやっとこ我が家に届きました。これだから田舎はー。
表紙は日本語版と同じものです。
本のサイズもほぼ同じですが、せっかくだからと諸事情で一冊分余らせてるGA二巻のカバーをかぶせて見たところ日本語版よりもほんの少しだけ小さいことが判明。とはいえ数ミリの違いなので、日本語版といっしょに本棚に並べても違和感はないでしょう。
さて、漫画本を買ったからには最初にやらねばならないことが一つあります。そう、カバー下の確認です。日本語版の「編集さんが一番ハラハラしている」「わかいひとたちにわかりづらいほうの旅人」がこの本にも収録されているのかを確認しなくてはなりません。
……って、この本はカバーがついてないよ!?なんてこった「わかい(後略)」はこの本には収録されないと言うのか!?アメリカンの人たちはSatoko Kiyudukiの貴重なネタ分を知ることができないというのか!?ジーザス!
と、思ったらこのおまけネタも巻末にきちんと収録されてました。えらいぞ。
日本語版でカラーだったページはきちんとカラーで収録。ちょっと印刷が荒い感じなのが残念ではありますが。
本文はもちろん英語です。残念ながら、ぼくにはニュアンスの違いを読み取れるほどの英語力はないので訳文のいい悪いについてはなんともいえません。
……いえませんのですが、一部「くろいひとさん」みたいな「~さん」の類を原文に忠実に「-san」と訳してるのがちょっとどうなのかしらと思います。いや、シーン的につけたくなる気持ちは分からないでもないんだけど、それでも「Traveler-san」や「Black Person-san」はダメだろう。
あと「2ケタのお前等~」が普通に「お子様のお前等~」になっていて、これまたちょっと残念。こっちのはまあ仕方がないけどね。
翻訳と言えば、それぞれに由来ありの登場人物の名前をどう訳すのかが気になってたんですよ。そのままの名前で通すのか?それとも適当な英語に置き換えるのか?そのまま通すなら「クロ=黒/Black」「ニジュク=二十九」「サンジュ=三十」という言葉が会話の中に出てくるニジュク・サンジュ初登場話はどうするのか?
まあ、タイトルを見ればクロちゃんの名前がそのままなのは一目瞭然ですが、ニジュク・サンジュにはトリコロ英語版の「かきみーら」級のイカス訳を欲しいよな!!
……残念なことにクロもセンもニジュクもサンジュもケイもそのままローマ字を当てただけでした。まったく残念です。
本編を読んで、会話の英文が手書き文字じゃなかったことに妙に落胆している自分に気がついてちょっとビックリ。何か、こうね……わたし勝手にクロの英語版は手書き文字で書かれているものだと思い込んでいたようです。多分、四コマ&作風(かわいらしい絵柄と裏腹に深いところで視点がシニカル)からチャールズ・M・シュルツのピーナッツが頭のどこかにあったんだろうな。
ううん、やっぱり手書きのがよかったよなー。(レタラーさんに無理を言うんじゃありません)
巻末では“TRANSLATION NOTES”の項目を設けて、「クロ=黒/Black」「ニジュク=二十九」「サンジュ=三十」だとか「じゃんけんぽん」だとか「くしゃみは誰かに噂されているしるし」だとか、そういった日本独特の用語・風習について解説されています。スペースが余ったのか「くしゃみと噂」の項目だけ妙に詳細で面白かった。そうか、くしゃみ三回だとそうなのか、非常に納得だ。
そのほかに、原文の日本語では彼らはこんな風に話しているんですよというページがあったり。こういうフォローは面白いな。
また、二巻の予告として二巻目第一話の日本語版そのままのページが掲載されています。こういうのはいいなぁ、次の巻が欲しくなる。かつてアメコミの和訳シリーズを刊行していた小学館やジャイブもその辺りにもうちょっと気を使っていればあのシリーズやこのシリーズも……。
【いや、どの道変わらなかったんじゃね?】
と言うわけで、いつもとはちょっと雰囲気のちがうクロちゃ一行の旅が楽しめる英語版。すでに(具体的には二年前に)対訳表も用意されていますから、英語が苦手な人でも安心ですよ。
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