ナルニア国物語 第2章:カスピアン王子の角笛
感想文を書いて削って書いて削ってしてたら一週間かかったよ。
ネタバレありにつき、映画未見の方は注意。
原作を忠実に再現した第一作と同じアンドリュー・アダムソン監督が続投の第二作。前作で地味だのなんだのと言われた影響か、今回は原作からの変更点が多く、かなり派手目の展開。エンターテイメント性は前作よりもはるかに高いです。前作に退屈した人たちも今作は楽しめることでしょう。
……とはいえ原作組としては、一般向けエンターテイメントとしてある程度は仕方ないにしても戦記物語的な部分が前に出すぎてるのがどうにも気になります。尺に対してアクション・戦闘シーンがかなり多めな分、物語的においしいシーンがごっそり削られているのが本当にもったいない。アダムソン監督が原作をすげぇ好きで、原作のテイストを出そうと色々がんばっていることが映画から十分読み取れるだけに惜しいよなぁ。まあ、監督にフリーハンドを与えたら一般ウケはいまいちだった一作目になっちゃうけど。
せめてコルネリウス博士の夜中の授業はシーンとしてほしかったなぁ。DVD版に収録されるであろう『撮影しているけれど公開版からは削られてるシーン』に期待かしら。
……してるよね撮影?
原作からの大きな改変といえば、子供から大人に一気にジャンプアップしたカスピアン王子の年齢ですが……やっぱりこれはちょっと駄目だろう。原作でピーターと同年代の子供がとった行動を成人した大人がなぞっているから、どうしてもカスピアンがだめな子に見えてしまう。彼については次回作「朝びらき丸東の海へ」での活躍に期待です。
ナルニアの人々は地味ながらも原作に忠実に丁寧に描写されています。あまり描写はないけど赤リスの枝渡りや死人山の天気てんくろうはきちんと登場しますし、ふくら熊が前足をしゃぶるのを一生懸命我慢してたりもします。かわいい。欲を言えば天気てんくろうがめそめそ泣くシーンも欲しかったなぁ。映画版のシナリオではいれるところがないけど。
エドマンドの成長も丁寧に描かれています。兄弟の中で一番優遇されてるの彼じゃないかしら。裏主人公ぎみ。
そしてぼくらのヒーロー、騎士の中の騎士殿リーピチープ!初登場シーンの演出は素晴らしいの一言!原作未読組には騎士殿の強さと愛らしさを見事にアピール。原作組には姿は見えなくてもこれは絶対に騎士殿の仕業だと分かるよいアクションでした。
ただ、リープの登場シーンは全体的に良いものなのですが、喋り方が妙に軽いのが残念。最初は字幕の文体のせいかとも思いましたが、それだけではなく演出としてもコミックリリーフを割り振られているのはあまりにもくどい印象を与えます。わざわざ騎士殿に面白いことを言わせようとしなくとも、いつも通りに騎士殿が騎士殿であればそれだけでほほえましいというのに。わざわざ気の利いたせりふを言うようなキャラクター性は余分です。「朝びらき丸~」では修正されることを祈る。
ナルニアへの行き帰りのシーンの描写は実に素晴らしい。描写としてはまったく原作の本文に忠実なんですが、アレンジが綺麗。そして、それをあまり仰々しく引っ張らずにさらりとすましてしまうのがスマート。
描写といえば、一作目といい今回といい、食べ物のシーンにほとんど力が入ってないのは大きなマイナスポイント。もったいないんですよね、原作であれだけ力の入った描写がされているのにまるでノータッチ。こんなに(文字通り)おいしいネタなのに。惜しいよなぁ。
逆に、戦闘シーンは力が入っています。テルマール人の鎧武者はいいなぁ。面貌とかすごい好み。
カメラワークはかなり上手い印象を抱きました。大勢が入り乱れる空間全体をきちんと見やすく収めています。ナルニアの住人たちが突撃するシーンでは小さなネズミたちの動きまで見分けられるんだから素晴らしいぞ!
パンフレットによるとテルマール人の城の中庭はセットとしてきちんと作ったものだそうです。撮影後は取り壊したとかで、なんとももったいない。
訳に関しては、微妙に引っかかる部分が色々とありましたが、「松露とり」や「オチカ」をはじめとする固有名詞ををきちんと訳してたから大目に見る。
というわけで、原作ファンではない人には普通にお勧めできる映画です。
そして、なんだかんだと文句を言いはしましたが、原作ファンも大筋では楽しめる映画だと思います。何しろ谷あらしやふくら熊、それにリーピチープが画面いっぱいに飛び回るんですから。むしろ原作ファンこそ映画館の大画面で見なくちゃ損ってものです。
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