ジャック・キャンベル『彷徨える艦隊 旗艦ドーントレス』
『救命ポッドの冷凍睡眠から目覚めたギアリー大佐は愕然とした。なんと救出されるまでに百年がたっていたのだ。しかも、わが身を犠牲にして味方を脱出させた軍神にまつりあげられている始末。そんな彼に与えられた任務は、敵の本拠星系に攻めこんだものの大敗し、満身創痍となった艦隊を、司令長官として無事に故郷へと連れ戻すことだった! 周囲を埋め尽くす強大な敵艦隊を前に、はたして彼がとった驚くべき奇策とは……!?』
コールドスリープから目覚めてみたら、我が身を盾に味方を守った英雄として祭り上げられていた主人公ギアリー大佐。目覚めたとたんに、司令官として敵勢力のど真ん中で満身創痍の艦隊を故郷へ帰還させる任務を背負わされ、次から次へと発生する問題に立ち向かう羽目になります。強力な敵勢力、あまりにも遠い故郷までの距離、100年間のブランク、枯渇しきった人的資源とトラブルは山積み。
そして一番の強敵は『英雄“ブラック・ジャック”ギアリー』という幻想とそれに対する周囲の一方的な期待の眼差し!
祭り上げられた虚像と生身の自分自身との差に辟易しながらも逆境から抜け出そうとするギアリー大佐には声援を送らずに入られません。がんばれギアリー大佐!
中盤に登場するコーバス星系の軽巡航艦クルー。弱小な戦力でありながらギアリー大佐を震え上がらせた勇者たちがお気に入りです。
ふとギアリーは、軽巡航艦の艦長に親近感を覚えた。艦の操縦法を知りつくし、訓練されたクルーを指揮する優秀な士官であることは間違いない。寂れたコーバス星系に配属され、来るかどうかもわからないアライアンス艦隊を何年、待ちつづけたのだろう? 普通なら、アライアンス艦隊など来ない……戦闘も起こらないと高をくくり、艦やクルーの質が落ちるはずなのに、あの連中は任務を怠らず、艦とクルーの質を維持してきた。その努力は無駄ではなかった。まだ、努力が報われる可能性はある。
作中に登場する軍人たちの中でもトップクラスの勇敢さと有能さを持つ男達でした。未読の人は今からでも遅くないからこの本を読んで彼らの活躍に心を躍らせようぜ!
関連:“ブラック・ジャック”ギアリーの戦い/『彷徨える艦隊 旗艦ドーントレス』(ジャック・キャンベル)の第四章を元にした二次創作(銅大さんのブログ)
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コメント
軽巡航艦のクルーはカッコいいですよなー。
個人的には、そこかしこに伏線がひいてある、
「よく理由の分からない開戦理由」
「便利すぎる超空間ゲート」
あたりがSF的にどう処理されるか、楽しみで
なりませぬ。
全体的に漂うビンボ臭い戦いというあたりが、
私の心の琴線に触れまくりですよ。
投稿: 銅大 | 2009/02/01 13:01
>軽巡航艦のクルーはカッコいいですよなー。
彼らも立派に主役を張れる人材でしたよねぇ。惜しい人たちを亡くしました。
そうそう、例の二次創作楽しませていただきました。
>「よく理由の分からない開戦理由」
>「便利すぎる超空間ゲート」
>あたりがSF的にどう処理されるか、楽しみでなりませぬ。
ぼくも楽しみです。すげぇ楽しみです。ああもう、焦らしやがる。二巻はいつ発売してくれるんだろう。
投稿: Johnny-T | 2009/02/03 00:22