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2009/01/08

ラリサ・ライスナー『ヨーロッパ革命の前線から』

『若き女性の遺した珠玉のルポルタージュ二篇を収録―。ロシア革命の内戦を描いた名作「前線」と、ヨーロッパ革命の主要な一環となることを期待されながら失敗に終わったドイツ革命の終幕に立ち会っての証言「バリケードに立つハンブルク」は、いずれも公刊のまたれていた記録である』

 この書物を私は、労働者大学の学生たちに捧げる――学生たちがけちをつけたかろうと、罵詈がかれらの口元まで出かかろうと、別にかまわない。
 しかしかれらは、最後まで読んでほしい。カザンからエンゼリーにいたる行程がどのようなものだったかを、知ってほしい。どよめくばかりの勝利もあれば、血の海におぼれた敗北もあった。ヴァルガ川でも、カマ川でも、またカスピ海でも――あのロシア大革命の時代に。

 1918年から1920年にかけてのロシア内戦を扱った『前線』と1923年のドイツ・ハンブルグの蜂起を描いた『バリケードに立つハンブルグ』の二つのルポタージュが収録されています。
 作者のラリサ・ライスナーはロシア内戦に政治委員として参戦しトロツキーと共に内戦を戦い、ヴォルガ・カスピ艦隊としてアフガニスタンに駐留。その後、革命の息吹に満ちたドイツのハンブルグへ向かい、失敗に終わったドイツ革命の終幕に立ち会ったロシア人ジャーナリスト。革命の最前線で全てを見てきた女性です。
 シビアな現実感覚とロマンチックな感性のバランスはサン=テグジュペリを思わせます。共産主義の理想に燃える人々を間近から観察し、詳細に記録し、彼らをを生き生きと描き出しています。そこには、前世紀のはじめに確かに存在した社会主義思想への希望と信頼を感じることができます。

 冒頭の一章を除いては、作中で作者本人の私的なことについては一切触れられていません。ただその一章、カザンからの撤退の際にライスナー本人が体験した冒険が、あまりにもドラマチックで印象的です。生々しくて血なまぐさくて危険で残酷な道程。だけど、不思議と陰惨とは感じませんでした。皮肉っぽいユーモア感覚のおかげでしょうか。読んでいて、速水螺旋人の筆でコミカライズするときれいにハマりそうだと思いました。

 友愛――手垢のついた不幸な言葉だ。しかしときおり、極度の困難と危険の瞬間には、それは私欲を離れた、清らかな、偉大で侵しがたいものである。ある夜、ぼろぼろの服を着、しらみにたかられて汚れた床に転がりながら、世界は素晴らしい、無限に素晴らしいと考えたことのない者は、一度も生きたことがなく、生命についてなにひとつ知らない。

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