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2009/01/20

益子政史『スコットランドヤード ロンドン悪の系譜』

 この本は、19世紀初頭に創設されたイギリス国家警察、スコットランド・ヤード(ロンドン警視庁)誕生前後のイギリスの警察制度を通観しながら、悪徳判事が横行する中で警察制度の道を開いた治安判事フィールディング兄弟、『大盗』と呼ばれたジョナサン・ワイルド、市民を恐怖の底に陥れた「切り裂きジャック」など犯罪に関わった人々を中心に当時の社会事情を側面から眺めた、いわばイギリス社会の裏面史です。
 『日の沈まない国』、偉大な大英帝国の首都、世界中の富が集まる大都会ロンドン。しかし、同時にそこは数々の悪党が跳梁する悪徳の都でもありました。街には泥棒や追いはぎが横行し、犯罪者を取り締まるべき治安判事たちは汚職に手を染め、私腹を肥やすことに血道をあげる。
 そんな悪党どもを駆逐するために生み出されたのがスコットランド・ヤードですが、その誕生までの道のりは決して平坦なものではありませんでした。

 興味深いのが、国家警察成立の最大の強敵が、市民の「泥棒は本来民衆の手で捕らえるものである」という伝統的な考え方であったということです。
 フォールディング兄弟のような熱心な判事の必死の活躍でもロンドンの凶悪化した犯罪には対抗しきれず、国家的見地から犯罪に対処するための警察行政改革の意見は何度も上申されましたが、議会や政府は「警察機構を確立することは市民のプライバシーを侵す」としてそれらを退けました。彼らは国家警察によって統治されることによって「自由」が制限され、さらには「自由を剥奪」されかねないことから「無警察」を美徳としていたのです。治安が乱れに乱れていることは誰もが知っているというのに。
……まあ、国家警察を作るとフランス(当時警察システムの先進国)の後を追うことになる――長年のライバルのシステムを猿真似することになる――というのも嫌がられた理由のひとつではあるようですが。

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