佐藤賢一『英仏百年戦争』
『それは、英仏間の戦争でも、百年の戦争でもなかった。イングランド王、フランス王と、頭に載せる王冠の色や形は違えども、戦う二大勢力ともに「フランス人」だった。また、この時期の戦争は、むしろそれ以前の抗争の延長線上に位置づけられる。それがなぜ、後世「英仏百年戦争」と命名され、黒太子エドワードやジャンヌ・ダルクといった国民的英雄が創出されるにいたったのか。直木賞作家にして西洋歴史小説の第一人者の筆は、1337年から1453年にかけての錯綜する出来事をやさしく解きほぐし、より深いヨーロッパ理解へと読者をいざなってくれる』
ドーヴァー海峡の北と南にある『フランス』の『フランス人』同士の戦いに過ぎなかった抗争が、百年続くうちに人々の意識を変えていき、新しい社会、新しい組織構造、新しい軍制をつくりだし、それまでの無数の領主の『集団』が中央集権的な『国家』へと変わっていく。
フランスの地方政権の一つであるイングランド領主とその封建君主であるフランス王の争い。つまりは『戦争』ではなく『内乱』であるところの百年戦争を通じて、イギリスがイギリスに、フランスがフランスになっていく過程を佐藤賢一らしい簡潔で読みやすい文章で丁寧に解説しています。なるほど、ナショナリズムとはこうして生まれるものか。
『英仏が百年の戦争をしたのではなく、その百年が英仏の戦争に変えたのである』
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