引用元:バカ一スレ
351 名前:イラストに騙された名無しさん 投稿日:2009/12/17(木) 19:28:04 ID:XP+fGjAq
>>339
巨乳と貧乳の歴史的な転倒についてだが、 僕が知る限り、十六世紀ごろではないかと思う。
ヨーロッパにおいて貧乳が礼賛されたのは、肉体嫌悪の伝統に由来している。
十六世紀フランスで一世を風靡したブラゾン詩という詩のジャンルがあるんだけど、このジャンルの開拓者として知られる詩人マロのもっとも代表的な作品として、「おっぱいのブラゾン詩」という二篇の詩がある。
第一篇は美しい乳房を礼賛するもので、「林檎のような乳房」「かわいらしい乳首」「手のひらにすっぽりと収まる」と、小ぶりの乳房がテーマとして選ばれている。
他方、第二篇は醜い乳房を攻撃するもので、「大きく醜い」「垂れ下がった」「谷間から腐ったような臭いがする」
と、巨乳に対して峻烈な批判を加えている。
ところが同じ時期、ルネサンス先進地で、肉体礼賛の文化が花開いたイタリアでは、豊満な肉体を美としてとらえる価値観が出現している。
貧乳と痩せた体を礼賛するのは、禁欲を至上の美徳と考えるキリスト教道徳と密接に関わっており、その逆に、快楽を肯定する文化の下では、たっぷりと食事をして、抱き心地のよい柔らかい体こそが、「美」としてとらえられるようになった。
ブラントームという、ルネサンスを代表するポルノ作家がいるのだが、彼は豊満な肉体を持つ女性が好ましい理由について、「痩せた駄馬に乗るよりも、逞しい名馬に乗ったほうが心地よいのと同じ」だと説明している。
快楽主義的に女性の体を分析するということ自体、ルネサンス以前の西欧文明では見られなかったことだ。
十六世紀のこうした傾向は、イタリア内でも地域差があったようで、例えばヴェネツィアなどは豊満礼賛傾向が比較的早く進んだが、フィレンツェでは痩せた女性がもてはやされた。
しかし十七世紀、遅くとも十八世紀には、豊満礼賛の価値観が欧州全体に広がった。
ドイツのウツという詩人は、1700年ごろに「美しい女性の条件は……乳房の肉付きがよいこと」と歌っているし、マロが「腐ったような臭いがする」と批判した乳房の谷間についても、同時代のドイツの詩人が、『決別せよ』という肉体礼賛詩の中で、「幾千の敵を打ち負かした男も、この谷間ではあべこべにやられてしまう」「香りの高い豊穣な庭」と表現した。
355 名前:イラストに騙された名無しさん 投稿日:2009/12/17(木) 19:47:14 ID:XP+fGjAq
しかしここで気をつけなければならないのは、十六世紀以降のこうした傾向は、一本道で進んできたわけではない、ということである。
特に宗教改革などは、豊満礼賛に対抗する巨大な敵だった。
例えば豊満な女体を描いたボッティチェリの絵画は、サヴォナローラ独裁の時期を境に、痩せこけた肉体を描くようになっていく。
そしてもう一つ指摘しておかなければならないのは、この豊満礼賛の傾向というのが、あくまでルーベンス的な、体全体の豊満さ、現代的に言えば「ぽっちゃり」した体を礼賛するものであって、乳房のみが過剰に膨れた体を美とするものではなかった、ということである。
もちろん、豊満礼賛の進む中で、乳房への傾倒・注目は進んでいく。
パイズリの発明者として知られるポンパドゥール夫人や、おっぱいマニアであったルイ十五世の存在は典型的である。
ルイ十五世は、自分の孫の嫁であるオーストリア王女に接見した使者に対し、まずは乳房の大きさを確かめるように命じたという。「彼女はフランスの国母となるゆえに」
乳房のみが豊満で、他は痩せた女性が求められるようになったのはいつからだろうか。
これは歴史学者の中でも論争があるところであって、コルセットなども、今日考えられているほど、細く締め付けるものではなかった。一般的に言って、この時代に理想とされたウェストは、今よりもずっと太かったのである。
最も有力な説によると、ボンキュッボンの理想が徐々に定着していくのは、フランス革命後である。
というのも、この革命では、貴族の好んだロココ的過剰さが批判されたからだ。
体の過剰なロココ的豊満さも、当然、その中に含まれたと考えられる。
それでは、なぜ乳房の過剰な豊満さは失われなかったのだろうか。
一説にはコルセット業者の陰謀であるというが、それはやはり短絡がすぎよう。
ロココの次にきたブルジョア文化とは、家庭のつながりを重視するものであった。
家庭とは、すなわち女性の乳房である。
これはジャン・ジャック・ルソーが家庭教育と、母による授乳(当時は乳母が一般的だった)を結びつけたところにも現れている。
肉体の過剰さが批判され、一方で母性が強調された結果、十九世紀から二十世紀にかけて、豊かな乳房と細い腰という現代的スタイルの礼賛が誕生するのである。
356 名前:イラストに騙された名無しさん 投稿日:2009/12/17(木) 19:49:54 ID:XP+fGjAq
<参考文献>
エリック・ホイエル『豊満の美』
マリリン・ヤーロム『乳房論』
エドゥアルト・フックス『風俗の歴史』
ジャック・ソレ『性愛の社会史』
ジャック・ル・ゴフ他『世界で一番美しい愛の歴史』
など
あとで参考文献を当たってみる用メモ。
とりあえずYES貧乳!NOロリータ!という部分だけ読んだ。
【そんなことはどこにも書いていない】
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