桂令夫『空中軍艦大和1944』
『夢か!?……大日本帝国海軍技術大尉、白瀬堅一郎は疑った。彼の前に現れた怪老人アオシマ氏は、日本海軍の大軍艦≪大和≫に、まったく新しい能力を与えようというのだ。
あらたな力を得た≪大和≫は、同型艦≪武蔵≫、≪信濃≫とはまったく違う軍艦として進水した。電子頭脳のはたらきで、瞬時に大砲のたまの軌道計算をおこなう、アオシマ式照準器。軍艦の前後左右のかたむきを調節する器械、アオシマ機関。それはまさに二十世紀科学の粋をあつめた、世界最大最強の軍艦であった。
だが≪大和≫をまつ運命はけして平らかでない。海から空から、津々として太平洋を侵し来るもの。それは世界一流の大国アメリカ合衆国がその科学、技術、産業、国力のすべてを注いだ大海軍である。そして米軍の猛将ハルゼー率いる空母部隊が、≪大和≫に致命の一撃を加えんとした瞬間、一つの隠された力が明らかになる!
鋼鉄の巨艦が太平洋せましと暴れまわる、血わき肉おどる軍事冒険活劇、ここに堂々開幕!』
さすが桂令夫だ。きちんと考証に則った頭悪い文章を書かせたら右に出るものがねぇ!
ちょっと冒頭の文章を引用しますと、
「あっ、これはどうしたことだ!」
白瀬堅一郎技術大尉は、思わず、そうさけんだ。
呉海軍工廠(海軍でつかうための軍艦をつくるところ)での、たいへんいそがしい仕事をおえて、秋の夜汽車にゆられていたところだった。
……と、全編こんなノリですよ。なんて素敵なトンチキテイスト。
仮想戦記というよりは昭和冒険活劇のノリで展開する大戦艦活劇。表紙を見れば一目瞭然の「大和」が空を飛ぶという奇想天外な物語。ゲラゲラ笑いながら楽しみましたよ。
ただ、挿絵には不満がありますよ。あれは本文のノリに合わせて真鍋博画伯に依頼するべきだったと思うね。
【とうに故人だ】
さて、久しぶりに読みたくなったぞ。『亜細亜の曙』はどこにしまったかしら?
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