峰守ひろかず『ほうかご百物語あんこーる』
『妖怪少女イタチさんと過ごす文化祭を描く『食いしん坊、万歳!』。イタチさんがドレスで音楽コンクールに出場する『タッチ・ミー・イフ・ユー・キャン!』。新井さんの唇を狙う妖怪との対決のため、新井さんちに泊まり込みする『ビューティーズ・アンド・ザ・ビースト!』。さらに、夜の学校で真一たちを襲った妖怪の正体は!?『ユー、ロボット?』など、電撃文庫MAGAZINEに掲載された短編4編に加え、9巻で消滅の危機を免れたイタチさんと真一のその後を描く書き下ろし『拝啓、十七の僕へ』も収録。
ピュア可愛いイタチさんと僕の放課後不思議物語、皆様のあんこーるにお応えして、短編集が登場です!!』
9巻終了後の時間軸で語られる最後の“放課後”。その後のあの連中のやっぱりにぎやかな日々。
……ところで、ちょっと奈良山の後ろ髪を切り落とす会を結成しようと思います。ヤツだけは許しておけない。
電撃文庫MAGAZINE誌に掲載された4本と書き下ろし1本の計5本収録の短編集。ただ短編が5本入っているだけではなく、短編集であるということ自体を物語を構成する要素に組み込んでいるので雑誌掲載版で読んだ人にもおいしい設計です。遊びはあるけど無駄はない。このあたりが実に構成に定評のある峰守クオリティ。
・『食いしん坊、万歳!』
1巻と2巻の間の出来事。文化祭で起きたちょっとした事件の顛末。『ほうかご』のエッセンスをぎゅっと濃縮したような話。
ろーすとちきんを探すイタチさんの可愛さがヤバイ。
・『タッチ・ミー・イフ・ユー・キャン!』
こちらは2巻の後の話。イタチさんと滝沢さんが仲良くなってからの出来事。
ニュー吹奏楽部の助っ人として演奏会に出演することになったイタチさんが巻き込まれた事件。
あえて言おう!しっぽギューエローイ。あとガーターベルトばんざーい!
・『ビューティーズ・アンド・ザ・ビースト!』
年上のお姉さんとお姉さんというにはちょっとトウがたってる感じの美女。略しておねーさんズの魅力満載のサービス回。いつもはちょっとお堅い先輩のパジャマ姿にときめいたり、クールな女教師の慌てふためく姿にたぎったりしようぜ!
・『ユー、ロボット?』
特撮ヒーローもの定番の変身怪人編。
この話には大きな不満があります。どうして挿絵がしかられて小さくなる滝沢さんじゃないんだ。涙ぐんだりしてるんだぜ!
【メディック、メディーック!中の人がやられたー!!】
そして、書き下ろし『拝啓、十七の僕へ』。どんな話かというと……
そしてラストの書き下ろしですが、これが意外に難産で。「九巻のちょっと後のいつもの日常」を書くか、それとも「九巻から数年後、大人になったそれぞれの人生」を見せるか。どっちもやりたいのは言うまでもなく、しかし書けるのは一本のみ。さあどうする俺!
(あとがきより引用)
どっちも読みたいのは言うまでもなく、しかし読めるのは一本のみ。さあどうした作者!どうした作者ぁ!!
そこは作者、峰守ひろかずの腕の見せ所。それはもうスマートに解決してくれましたとも!ぼくたちが読みたいものをすべて詰め込んでくれましたよ!素敵なものいっぱい。入ってないのはケミカルXと新体操部で活動中の鱗さんのレオタード姿の挿絵くらいのものだぜ!……って、ちょっと?大事なものが入ってないですよ!?(首尾一貫したスタンス)
ところで、9巻の後ということはつまり9巻の後ということで、きちんと恋人として同居から同棲にクラスチェンジした真一とイタチさんのラブラブな日常も垣間見えるぞ!
……おれは真一の鉛筆がすべて6Bになってしまう呪いをかけねばならない。かけねばならないっ!
とはいえ、ナチュラルギャルゲ主人公のフィル君がうらやましくないのはどうしてだろうねぇ。
あー、江戸橋先輩は強く生きれ。というかね、8巻でカミングアウトしてからのあなたの行状は目に余りますよ。このロリコンめ!(バックベアードっツラ)
最後に補話。最後の最後のワンシーン。
そう、この物語の締めくくりはこのシーン以外にはありえないよね。ラストエピソードにふさわしいエンディングでしたよ。
最終巻のお楽しみ。シリーズ最後のあとがきは作者の思い入れが詰まった12ページの大ボリューム!メインキャラクター全員への愛のこもったコメント満載。無論、求道丸と穂村にもありますよ。
でも、ぼくのソウルブラジャー……失礼、かみました……ソウルブラザー九頭原くん(6巻登場)へのコメントがない件については……まあ別にいいか。
全十巻、心から楽しませていただきました。楽しい時間を本当にありがとうございました。真一とイタチさんと愉快でにぎやかな仲間たちから離れた次のシリーズにも期待しています。よき青空を!
……でもね、『ほうかご百物語スピンオフ 粂神さんちの妖怪事情』とか始めても、それはそれで別にかまわないのよ。
●既刊感想リンク
・『ほうかご百物語』
・『ほうかご百物語2』+電撃文庫magazine収録短編“食いしん坊、万歳――或いは、ダリの事”
・『ほうかご百物語3』
・4巻(欠番:あのころは忙しかってん)
・『ほうかご百物語5』とそのほかあれこれ――或いは、ビキニアーマーが嫌いな男子なんていません!の事
・峰守ひろかず『ほうかご百物語6』
・『ほうかご百物語7』
・『ほうかご百物語8』
・『ほうかご百物語9』
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コメント
ご愛読ありがとうございました! 気合いの入った感想にも大感謝。ただもうありがとうございましたとしか言えません。うん、ガーターベルトはエロいですよね。良き青空を!
>ソウルブラザー九頭原くん(6巻登場)へのコメント
ほら、彼は「その他妖怪」枠ですから! 忘れてたわけじゃない! ないんだよ!
投稿: 峰守 | 2011/01/10 20:44
10巻楽しませていただきましたー。次回作も楽しみにしていますー。
……って、
>うん、ガーターベルトはエロいですよね。
そこを拾うのかよっ!
投稿: Johnny-T | 2011/01/12 23:00