今日の読了本『北極海へ』
・野田知佑『北極海へ』
『風になぶられ、日に灼かれ、原始の大河マッケンジーをただ一人、北極海へ。ウイスキー、釣竿、テントを積みこみ、いざ無垢の世界に……。幸福も不幸も自分が決める。身にしみわたる清澄な孤独感。そして流域のインディアンに友を得る歓び。男の望むものがすべてそろった痛快無比、カヌー1800キロの冒険譚。』
カナダ北部の大河マッケンジー川をカヌーで下り北極海に至る1800キロの旅。あせらず急がず肩肘張らない冒険記……だけど甘くも温くもない。
広大な大河を下る間に目にする自然、触れ合う人々。河という別世界のありようと極北に住む人たちの生き方に、あるときは驚き、あるときは感心し、あるいは頷き、時に呆れる。
旅の魅力が満載の一冊。これを読んで旅に出たくならない人間はいないと断言できます。
「これはいったい何だね?」
カナダのバンクーバー空港の税関で、気難しい顔つきの老係官がぼくの荷を指差していった。大小八個、総重量90kgの荷物である。
「えー、カヤックです。折りたたみ式の。こちらがカメラ、フィルム、キャンプ用具で……」
するとその男の顔が輝いて、いかめしい官僚が好々爺に豹変してしまった。
「なになに、カヤック?こんなに小さくなるのか。で、組み立てるとどのくらいの長さになるのかね?このパドルも折りたたみだな?フムフム。こいつは良くできてるなぁ」
彼はニコリと笑い、握手の手をさしのばして、大声でいった。
「カナダへようこそ!グッドラック!実はね、俺もカヌーを三バイ持ってるんだ。カナディアンだ。十六フィート、十八フィート、それと十三フィートのやつもあるぞ、今年の夏は家内と三週間かけて、湖から湖へ伝ってツーリングする予定なんだ。おれは60歳だが、みてくれ。この腕を!(と力こぶを作って見せる)まだまだ若いとも。おお、早く夏休みがこんかなあ。なーつーやーすーっみっと」
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