セシル・スコット・フォレスター『青銅の巨砲』
『十九世紀初頭、スペイン全土は戦火につつまれていた。怒涛のごとく押しよせるフランス軍の前に、スペイン軍は次々と敗退していく。ゲリラの一隊が偶然に巨大な攻城砲を手に入れたのは、そんな時だった。凄まじい破壊力を秘めたその雄姿――彼らにとってはまさに守護神であった。かくしてゲリラたちはその巨砲を擁して果敢な反撃を開始する!ふりそそぐ砲弾、たちこめる硝煙、そしてうずまく夢と野望――祖国開放のため死を賭して戦う男たちの姿を重厚な筆致で描ききった、<ホーンブロワー・シリーズ>の巨匠会心の歴史ロマン!』
ナポレオン戦争時代のスペイン。1個の大砲と戦場に生きる野蛮人たちがレオンの平野で暴れまわる!
ホーンブロワー・シリーズで知られるフォレスターがスペイン<半島戦争>をテーマに描いた傑作。
原題は『THE GUN』。その名の通り、まさにこの攻城砲こそが主人公といえるでしょう。
重量三トンを誇るこの巨砲がのっしのっしと歩むとき、その眼前に立ちふさがることの出来る敵堡塁はない。四メートル余の砲身を誇るこの巨砲がひとたび火を吹くとき、その威力のほどに抗しうる敵砦はない。巨砲が全能であればあるほど、ひとはその威のほどに信をおき、力のほどにすがりつく。そして、あげくの果ては、逆にこの巨砲にふりまわされることになる。この巨砲あるがゆえに敵を屠らなければならないはめになり、惰性(はずみ)がつき、ついには制御もままならなくなるとすれば……
(あとがきより引用)
それは兵器ではなく、自然災害のような現象としての存在。まさに周囲の全てを飲み込む大嵐。その大渦の中で必死にもがく人々の物語。
ナポレオニック小説ではあまりクローズアップされないスペインゲリラたちがメインというのもうれしいですね。
世界史に始めて登場した<ゲリラ>たち。神出鬼没を武器に敵を攪乱した不正規部隊。どこまでも野蛮で残酷なろくでなしどもよ!
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