時雨沢恵一『キノの旅XV』
『キノとエルメスは、西に向かって走っていました。大地がほんどん岩なので、舗装道路並みに固いです。段差もなく、どこを走っても道になります。キノは快適にエルメスを走らせ、そして次に進路を塞ぐサボテンをゆったりと避けながら、「もともとは、師匠から聞いた話なんだ」「じゃあ、結構前の話だね」エルメスが言って、キノは頷きました。「だね。師匠はこう言っていた―“とてもとても美しい廃墟があった。岩山の麓に石で作られた国があった、泉から引かれた綺麗な水がまだ水路を流れていた。今にでも何万人もが住めそうなほど綺麗な町だった”って」(第三話「過去のある国」より)他全10話収録』
ついに15冊目ですよ。ずいぶん遠くまで来たもんだ、キノの旅はどこまで続く?
いい話、ひどい話、笑える話、悲しい話色々詰まってます。今回はちょっと長めの話が多いかな。
同じテーマの口絵の2編は、単体で読んでも面白いし、両方を対比させてみても面白い。
全てを圧倒する師匠とお弟子さんのケダモノっぷりが光る「ケダモノの国」。
「マニアの国」のキノ・フィギュアシリーズ、4列目のシリーズがいいな。3列目も悪くないけど、こっちの涙目の方が好み。
「ジャーナリストの国」では世にも珍しい怒り心頭ブチ切れキノが見られますよ。
12巻以来の再登場、あの子とシリーズ3人(台)目のしゃべるモトラドのコンビのその後のお話もあります。『フォトの日々』は、キノの旅とは思えないくらいほんわかとしたお話。ポプラ通りの写真家さんの次の登場はいつかしら?
「犯人のいる国」はミステリーとしてはかなり反則だけど、これだけいろいろな国をたどってきた今なら「ああ、こんな国もあるよな」で許せちゃうな。
「あなたはそう教えてくれたではありませんか!」
……“彼”の心が救われますように。
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