今日の読了本『オブザデッド・マニアックス』
・大樹連司『オブザデッド・マニアックス』
『授業中、いつも妄想していた。もしも今、この学校をゾンビたちが襲ってくれたら――。恐怖の叫び声を上げ逃げ惑うクラスメイトたち、何もできずおろおろする先生……。ざまあ見ろ、最高だ!ゾンビ映画ばかり観て現実と向き合えない高校生・丈二。しかし、嫌々参加したクラスメイトとの夏の合宿で、本物のゾンビハザードが丈二とクラスメイトを襲う!ボンクラでオタクな僕が、みんなを救ってヒーローになる!?さらに学校一の美少女も思いのままに!?怨念じみた妄想が現実になったとき、待ち受けるのは天国か、それとも地獄か!? 』
ロケットで繋がる若者たちの青春群像を描いた『ほうかごのロケッティア』の大樹連司が送る、ゾンビで繋がる若者たちの青春群像。
ろくでもない話で、ひどい話で、いい話だった。
この作者さんの胃が痛くなるような生々しい人間……というか「教室」の描写は健在。ロメロがゾンビ映画で社会を風刺したしたように、大樹連司はゾンビ小説で学校社会を風刺するのだ――あ、いや、与太で書いたけど本当にそうなのかも?
あと、要所要所で炸裂するボンクラオタク描写も健在。
「だ、脱出って――、ぼ、ぼくらだけで?む、無理だよ、無理に決まってる――」
「――江戸川」怯える彼に僕は言った。「学校でさ、屋上に一人でいるだろ。そこにゾンビが来るんだ。テロリストとかでもいいや。無事なのは、お前一人――わかるな」
(中略)
僕は江戸川の眼をまっすぐに見つめる。
「今が、それ、なんだ、わかるだろ、江戸川」
わかるはずだ。おまえなら。
シリアスなシーンでこれかよ。クライマックスなんかもっとひどい内容を口走るんだぜ、シリアスに。
ゾンビ映画への愛とトンチキオタクへの共感に溢れた素晴らしい作品でした。
……ああ、ショッピングモールよ。
僕には映画館の暗闇がある。ゾンビ映画がある。
――それさえあれば、きっとこれからも、生きていける。
ちなみに、ぼくの一番好きなゾンビ映画は『ゾンビコップ』です。とゆーか、後発作品や続編は色々見たけど、いまだに最初の『ゾンビ』は見たことないや。
<ネタバレ>
ところで、主要人物の名前が特定ジャンルに由来してるのは分かるんだけど、
・安東丈二:ジョージ・A・ロメロ(エィロメロとあんどう……近いような遠いような)
・城ヶ根莉桜:ダリオ・アルジェント(銀:しろがね)
・佐武来実:サム・ライミ
・古池潮:ルチオ・フルチ
・江戸川明広:エドガー・ライト
……までは分かったけれど、残りの二人がどうにも思いつかない。
</ネタバレ>
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