新潟市新津美術館『ウルトラマン創世紀展~ウルトラQ誕生からウルトラマン80へ~』レポート
『特撮の神様と呼ばれた円谷英二。そこに若い脚本家、監督、特撮スタッフ、芸術家が集い情熱を注いで、1966(昭和41)年「ウルトラマン」は誕生しました。それからおよそ半世紀にわたって、その映像は多くの人々の心を捉え続けています。
娯楽の中心が映画から新たに誕生したテレビへと移り、さらにテレビの黄金期を迎える昭和時代において、ウルトラマンを生み育てた制作現場では、熱き思いとともに様々な挑戦が繰り広げられ、時代の要請に応えて変化を遂げてきました。
さらに、子どもを対象とした雑誌やおもちゃなどの産業が隆盛をきわめる中、商業デザインの世界で、ウルトラマンは多くの若手画家の活躍の場となりました。そして子どもたちは、この雑誌やおもちゃにより記憶を定着させ、想像の世界を広げ、永遠のヒーローとしてのウルトラマンを心の中に刻んでいきました。
当展覧会では、その原点である「ウルトラQ」(1966年)の誕生から、「ウルトラマン80」(1980年)までのウルトラマンシリーズを取り上げ、その人気の秘密を、送り手である制作側の情熱と、受け手である子どもを取巻く文化の両面から探ります。当時夢中になっていた世代から、昭和のウルトラマンを知らない子どもたちまで、多くの世代にウルトラマンの魅力を存分にお楽しみいただきたいと思います。実物マスクや小道具ほか、初公開作品を含め約1000点に及ぶ資料を一挙に公開します。』
そんな御託はいいさ。おれは生メカギラスが見たいだけだ!
……そう嘯きながら始発電車に乗り込んで出発。音楽プレーヤーには『ワンダバ!』を放り込んでテンションをあげながら。
長文につき、以下折りたたみ。
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新潟、新津駅からバスで十五分。
バスから降りて、歩くこと五分。
これが新津美術館だ!入り口に巨大なウルトラマンがいるから間違えようがないぞ!
なるほど、次回展示は『手塚治虫展』か。
エントランスではウルトラ兄弟がお迎えしてくれます。
(アトリウムのみ写真撮影可)
これはテンションがあがってきた!
カネゴンにお迎えされながら会場入りすると、入り口すぐに展示されているのが円谷英二の日記でホロリ。
最初に語られるのは、円谷プロの成立と、その第一号作品――になるはずだったが諸般の事情で中止。後に「アンバランス」企画を経て「ウルトラQ」に発展する――SFファンタジードラマ「WoO(ウー)」。
そして、その驚異的映像を実現するために必要不可欠な光学合成機オプチカルプリンターの購入(当時の金額で4千万円。現在の2億円以上)と使用(最終的にTBSに納入されたものを時間借り)についての顛末について。
おいおい、そこからはじめるのかよ、ホットだな!この企画展、どうやらモノホンだぜ!
そうして、この静かに熱い展覧会を見て回ったわけですが……これは広告の出し方に問題があるといわざるを得ない!だって公式サイトの紹介ページで受ける印象よりもはるかに豪華なんですもの!
紹介文中で「色々置いてあるよ」とさらっと紹介されている中に、全ての防衛組織の当時撮影に使った隊員服(多くは主人公・ヒロインが着用したもの)があるなんて聞いてないし!壁一面に飾られている怪獣・メカニックデザイン画がこんなに枚数があるなんて言われてない!そもそもこの生キングジョー(無論当時の撮影用)なんかこれだけでお客が来るよ!公式サイトに写真つきで紹介されている生メカギラスなんか一番の小者じゃないかっ!?
それ以外にもラゴン・セミ人間のマスクの原型だの科特隊カタパルトだのジャミラの円盤だのウルトラホークだの恐竜戦車だの……(中略)……ああっダイナマイトボール(80)までっ!?
みんなが見たがっているものから、いやもうよくこんなものが残っていたなと思えるようなものまで素敵アイテムが山のよう。全部を紹介したいけれど、そうもいかないので印象的だったものだけ抜き出して紹介します。
・極端にパースのついたウルトラマン登場シーン(↓)の巨大化飛び出しモデル。初代では横から見るとたいへん愉快なこの模型を使っていたのが、タロウの頃には普通のスーツに手指だけ大型の模型を装着して撮影するようになったなんていうのはなるほど納得の進歩。
・ツインテールやアンノンの造詣用採寸図からは、あのめんどくさいデザインの中にどう人間を仕込むかという工夫が読み取れます。
・メフィラス二代目のデザイン画に「腹が少々出ている」と明記してあるのには吹き出しました。
・ZATの隊員スーツは通常、ダメージ(小)、ダメージ(大)の三種類が用意されているなんて知らなかったなぁ。
・メカギラスさんの頭はよく見ると戦車プラモのパーツとかそのまま使っててるのね。ちょっと離れるとぜんぜんわからないけど。
そうしてそれぞれのウルトラ戦士のコーナーを見終わったら、今度はテレビ本編からのスピンオフのコーナー。
少年雑誌の記事や玩具のボックスアート、玩具そのものとその他のアイテム。サンダルや水筒にスパイダーショット型ケースに入ったシャンプーまで。ケースぎっしりのソフビ人形はいったい何事か!?
ここでしか見られないものが山盛りいっぱいの素晴らしいイベントでした。もう大満足。
これでもう少しアクセスがよければ文句なしだったのにね……。
・おまけ2:JR新津駅→美術館のバス時刻表
控えめにいっても本数が少ないので注意。乗り換えのタイミングが合うのならJR古津駅から歩いたほうが早いかも。
○東口発車
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コメント
素晴らしいレポートありがとうございました。
ここまで喜んでいただいてやったかいがありました。
投稿: 主催者 | 2012/05/05 08:18
ふおお……!
うらやましゃアアーッ! ← 怪獣化
投稿: 茗荷屋 | 2012/05/05 19:21
バム星人の罠を突破しての帰還、お疲れ様でした。
ほうほうふむふむ。埼玉でちょっと前にやってたやつより規模は大きそうですな。帰りマン以降のデザイン画って見る機会あんまりないですし、これは行っておかねば。
投稿: エム | 2012/05/05 22:44
・主催者さん
おお、素晴らしいイベントをありがとうございます。心から楽しませていただきました。
・茗荷屋さん
むむ、怪獣出現だ!撃退しなくては!アクセース、フラーッシュ!!
【ウルトラネタで返せよ】
・エムさん
いやもう、本当によいものでした。行けるようならぜひ行ってください。
投稿: Johnny-T | 2012/05/09 00:04
二年後からこんにちは。
同じ企画展が滋賀県は佐川美術館で開催されたので行ってきました。
改めてこちらのレポートを拝見すると感慨深いものがありますね。
展示品の内容は若干変化があるのでしょうか。
私は生ウィンダム(の頭)の造形の細かさがオドロキでしたね。
ウルトラシリーズ全話の台本(中も見たかった)所有者の落書きつきとか鼻血もんでした。
ウルトラQなんて一話ごとに表紙デザインが変わってるんだもんなぁ。
あと、開催地の記録を見ると、どうも交通アクセスの悪いところを意図的に選んでいるような・・・汗
投稿: わびすけ | 2014/05/19 13:16
>佐川美術館で開催されたので行ってきました。
おお、おめでとうございます。このまま日本全国を巡って欲しい企画です。
>ウルトラシリーズ全話の台本(中も見たかった)
ですよね!
コピーでいいから一冊手にとって読めるものが欲しかったです。
>交通アクセスの悪いところ
……(無言で天を仰ぐ)
投稿: Johnny-T | 2014/05/25 15:01